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偽りの身の上〜身代わりの姫君〜
第2章 連れられて身代わり

私の家が丸々二つや三つは入ってしまいそうな広さで、ゴールドとミルキーピンクで統一された豪奢な装飾に目がくらむ。
リビングにはガラスのテーブルとフカフカのソファが着いており、奥に続く部屋は寝室だった。一人で使うには気が引けるほどの大きさのベッド。さらに奥には簡易的な浴室とトイレがついていて、そのままこの部屋だけで生活ができそうな設備に眩暈がした。
ふらふらとその部屋中を歩いているとふと、大きな姿見にお姫様が映し出される。
華やかで可憐で、女の子なら誰しも憧れるであろう贅沢なドレスに身を包んでいるのに、冴えない表情で、迷子の子供みたいな顔をした女の子。
少しずつ近寄っていき、その困った表情の彼女に元気つけるように笑いかけてみると、その子もまた、私に笑いかけてくれる。
その姿が全身でお姫様であることを伝える。
自分は姫なんだ。普通の人よりも高い地位。だから、気をつけなくてはいけない。
バレたら、兄さんの治療が受けられなくなってしまう。今まで何人も姫が逃げ出してきたこの国なら戦争になったりはしないだろうが、ルバルドからは追放されるかもしれない。
今朝、家を出る前に見た、粗末なベッドに横になっている兄さんの姿を思い出すと、元気になってもらいたい気持ちと共に心細さが顔を出してきて、また鏡の中の少女の顔が歪んだ。
だから手を伸ばしてその鏡面に触れる。
「大丈夫、やり遂げてみせるわ。兄さんのためだもの」
そう呟くと、お姫様の格好をしているのに心は騎士にでもなったかのようで、ゆっくり息を吸い込んで胸を張った。
夜、ハイネの言うとおり夕飯はふくよかな女性のメイドが部屋まで食事が運んできた。縁がなさ過ぎて何を食べているのか分からない品々に舌が混乱して、初めての豪華な食事はあっという間に終わった。
ぎこちなくシャワーを浴びて、部屋の隅に運ばれていた荷物を開けてみると、使い方のわからない化粧品やいつ着るのかわからないドレスの数々でげんなりする。
(これを明日からは毎日一人でしないといけないのね……)
それらを全部戻して寝室の隅に追いやると、コンコン、と控えめにドアが叩かれた。
「はっ、はい!」

