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偽りの身の上〜身代わりの姫君〜
第6章 あいするひと
――ゆらり、ゆらり……。
懐かしい夢を見ていた。
賑やかに、人々の群れが次々と現れては自分に笑顔を向ける。歓迎し、眩しい活気のある世界。
ハイネにとって、もう随分と昔に見た景色。
「――ん、」
クラクラと眩暈を覚えながら目を開いた。
見ればもう夕方で、見慣れた玉座に座っている。あの三人だけの夜会のあと、朝は普通に起きたはずだがそれ以降の記憶がない。
自分は一体どうなったのかと頭を触ろうとすると、その手が何かで阻まれた。
(……手錠?)
ガチャリと太い鎖で片手が玉座の肘掛に巻き付けられている。下の方に南京錠で固定してあるのが見えた。
重く冷たい鎖は細い手首を折りそうなほど頑丈で、それをわざわざ二重三重にしている。
「……なんだ、これ」
ボソリと呟くと、そこで初めてこの部屋にもう一人、存在していることに気づいた。
夕方の光がハイネにあたらないように、その一面だけカーテンが引かれてその隣に見慣れたメイド姿の娘が緊張した面持ちで立っている。
「……は、何……」
頭がぼんやりとしている。まだどこか夢心地のようで、この症状には覚えがある。
「ふふ、お前が飲ませたのか」
これは薬だ。一時的に眠らせて、記憶をなくす。
今までに来た姫がハイネの姿を見て半狂乱になった時、飲ませて自国に送り返すために使っていた。
おそらくジバルが保管していたはずだが、彼女になら渡すだろう。
「それで……こんな大層なもの巻きつけてどうしたんだよ」
「祭典」