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偽りの身の上〜身代わりの姫君〜
第6章 あいするひと
頭上に佇む醜き主君はただ一言、そうか、とだけ呟いて、城の方に歩き出した。そのあっさりとした返しに多少戸惑ったものの、彼の行く先が城であることにホッとしてそのあとを追った。
彼は城に帰ってすぐに朝日によって姿が戻ることを知った。
彼は自分の名前からとったハイネという幼い召使いのふりをして白城に向かい、宣言通り王が呪いをかけられたことを他の者たちに伝えた。
もとより立ち入りを禁じられていた黒城はいよいよ呪われた。
黒く陰湿に建つその城の王座にはジバルが座る。
幼き頃に何が何でも豊かな暮らしをしてやると誓ったジバルは、確かに願ったものを手に入れたがそれは思い描いていた形とは全く違っていた。
誰もいない王室にたった一人でニセモノの王冠を被る。召使いは昼間は天使のすがた、夜は醜いモンスターへと姿を変える主君。なんと滑稽なおとぎ話だろう。
彼は自分の呪いを解くために、他の国から娘を呼んでジバルと引き合わせ、昼の姿だけで自分を愛してもらおうとし始めた。
王子は確かに賢く、しかしそれは狡猾と言われる部類のものだった。まるでゲームをするように、次々とどこかの姫君を連れてきてはジバルの姿に怯える彼女たちの反応を楽しんだ。それでもジバルはもう玉座についてしまった。王子が満足するまで、このゲームを終わらせることはできない。
「お前の醜さに皆、僕を愛するどころではないな」
彼はもっと効率よく呪いがあることを周囲の国に知らせるために、たくさんの吟遊詩人を呼び集め、自分の身に起こったことを少し変えておとぎ話として流布させた。
最近はもう王子という位置を捨て、王との連絡係という立場を楽しんでいるようだった。
それでも王がすべき政は彼自身が、亡き王のふりをして続けている。ジバルがここに引き止めたせいだろうか。それとも、彼自身に生来備わっている王族の本質がそうさせるのだろうか。