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偽りの身の上〜身代わりの姫君〜
第6章 あいするひと
ふうとため息をついた時、ふと見慣れない男が次々にドアを開けて部屋をのぞいているのが見えた。
華奢で召使いとも思えない服装の男は、ジバルの存在に気づくと脱兎の如く反対方向に走っていく。その姿に、ぞわりと背筋に冷や汗が湧く。

嫌な予感がして、彼女と王子のいる謁見の間に急いだ。

「王子!」

扉の前にはさっきとは違う、今度は屈強な体つきの男が剣を抱えてドアを蹴破っていた。心臓がドクリと跳ねる。

転がるようにして男の後を追うと、無気力な目の王子と、男の持つ振りかぶった切っ先が見えた。



「ハイネ様!!」


頭の中は真っ白で、男の背中に飛び掛る。男は引き離そうと四肢をばたつかせ、剣を振り回す。その刃がいくらあたっても構わなかった。

もみ合い、その剣が出鱈目に後ろに向かって振り回されると腕に熱を感じた。続いてわき腹、肩。その立て続きの鋭い痛みに手が離れ、もう一度男が王子に向かって振りかぶる。


「ハイネ!!」


その声に、またドクンと心臓が強くなった。

今まで見えていなかった、王子の下から彼女が飛び出す。どこにそんな力があったのかというくらい、王子を押し退けるようにして体を前に出す。大きな王子の体を守るように覆いかぶさった。




(ああ、守らなければ)



この二人を守りたい。だってそのために、生まれてきたと思ったから。

気づいたら、体が動いていた。




***
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