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偽りの身の上〜身代わりの姫君〜
第6章 あいするひと

「ハイネ、様……ずっと、言ったことはありませんでしたが……、オレは、呪いがなくても、国王のことがなくても、いつでも、……あなたのために、……」

「……うるさい。話すな」


ハイネの声がくぐもる。
どんどん冷たくなっていくジバル様の指先に、私は頭が真っ白になっていく。

(私のせいだ……)

ユーリが来たのは、モンスターを殺しに来たからだ。アメリア姫を助けるためだ。私が森に行かなければ、この国に来なければ、ジバル様はこんな目に遭わなかったのに。



「ミア!!」


その時また、懐かしい声を聞いた。

「……兄さん?」


なぜここにいるんだろう。
あまりにも思いがけない人物の登場に私は言葉を失う。

兄さんはすぐ近くに倒れるユーリの姿を見て、まるで汚いものを見るように目を細めた。そのあとすぐに私にいつものような柔らかな笑顔を向ける。


「ああ、良かった。お前からの連絡がなくて心配していたんだよ」

「兄さん……なんで……」

「今まで辛い思いをさせてすまなかったね。もう元気になったから、また前みたいにあの家で二人で暮らそう。……ッ!」


私に向かって歩いてくる途中に、その足はユーリに掴まれる。その手を、兄さんは無表情で蹴って放した。こんな表情をする兄を見たことがなくて、またこの場にいる理由も分からなくて、私は動けない。


「ああ、ソレが噂の王様、なのかな。似たような獣がたくさんいる国だなあ。ねえ、ミア、僕はもう元気になったし、お前はここにいる理由がなくなった。心配しないで帰っておいで。一緒に帰ろう」

「……、貴様……」

憎悪を溢れた声でユーリは顔を上げる。その視線の先はジバル様でもハイネでもなく、兄さんだ。


「兄さん……? ユーリを、知っているの?」


手紙がどうとか前に聞いたけれど、上手く思い出せない。久しぶりに見たはずの兄は、どこか別人に見えるほど歪んだ視線を私に向ける。
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