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偽りの身の上〜身代わりの姫君〜
第6章 あいするひと
そう言ってチラリと部屋に蹲るユーリと兄さんに視線を向けて、みんなが自然と道を開けたところから出て行った。
入れ違いに医者なのか数人が部屋に入ってユーリや兄さんに駆け寄る。
まだその姿に現実味がないメイドたちは呆然と立ち尽くし、別の者ははっと気づいたように白城に走り出す。
「ミア」
なす術もなく事の成り行きを見ていた私に、廊下を出たところでハイネの声が響いた。
(はじめて名前……)
「早く来い。……まだ僕のメイドだろ」
「はっはい!」
その言葉に飛び跳ねるようにして返事をする。
チラリと兄さんを見ると、気を失っているようでぐったりとしたまま介抱されている。振り切るようにしてハイネのあとを追った。
「……」
白城の医務室は白く二つのベッドから、二つの一定のリズムが鳴り続ける。
その音が、ジバル様とハイネの生きている証だと医者から言われた。
――「出来ることはしました。あとは本人次第です」
ハイネは死にたがっている。だから私は頷くことしかできなかった。