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偽りの身の上〜身代わりの姫君〜
第6章 あいするひと
開けっ放しのドアからメイドの一人が顔をのぞかせて、持っていたティーセットを床に落とす。
その音に何事かと他の召使いたちも集まってきた。
「っ」
ハイネは咄嗟に布団の中に潜り、ジバル様は身を硬くするのが分かった。
さっきこの人たちに治療を受けたばかりだけれど、やはり意識があるときに明るい場所で姿を見られるのは、まだ少し時間がかかるのかもしれない。
私はジバル様の手を握り、反対のベッドで縮まる王子を布団の上から撫でた。大きい体は布団が足りてなくて、ほとんど頭以外は隠せていないけれど。
「ハイネ様。大丈夫ですよ」
「……」
メイドや他の召使いたちはハイネの様子を見ては各々視線を交え、困ったような笑いを浮かべたり気落ちした様子で姿を消す。そんな中、最初に顔を覗かせたメイドだけがニコニコと部屋に入ってきた。
「まあまあ! お早いお目覚めで……いえね、外の様子をお嬢ちゃんに教えてあげようと思っただけなんですよ」
「外の様子?」
なんのことだろうかとジバル様と視線を合わせる。当然二人はベッドから出られる状態じゃないので、私がメイドを追いかける。ベッドを素通りして窓辺まで歩いて行くと、かけられていたカーテンを開いた。
それまで気づかなかったけれど、ここは町側に面した部屋だったようだ。
薄暗い空の下に広がる光景を見て私は声を上げた。
「わあ……! は、ハイネ! ハイネ!」
「うるさいな……気安く呼ばないでよ」
私の声に布団の中からくぐもった声が聞こえる。メイドは笑った。
「ハイネ様、ご覧くださいよ。皆あなたのために集まっているんですよ」
「……僕の?」
その言葉にようやく布団の中から青い眼が見える。布団を被ったまま、胸元に貼ってあるコードを引き剥がしておずおずと窓側に近づいた。
「――っ」