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偽りの身の上〜身代わりの姫君〜
第6章 あいするひと
一面の金色の明かり。
まるで稲穂のように、薄闇の空であることを忘れさせるほど明るく輝くその光は街の中心部まで続いていた。
最初は何か分からなかった。地面が光っているのかと思った。けれど、それは人だった。
「ハイネ様とそちらの方の心配をして、皆回復をお祈りするために集まったんですよ」
蠟燭を持ったたくさんの人が集まって、ハイネの、ジバル様の身を案じている。
受け入れてもらえた。その事実にジンと目頭が熱くなった。
隣を見ると、ハイネも驚いたように被っていた布団を床に落としたまま、その景色を凝視している。
「……」
その見開かれた青い眼から、ボロリと一滴、涙が落ちた。
その時、反対側の部屋の角が急に光に包まれた。中心には美しい女性が映し出される。彼女は部屋中を見渡すようにして、最後にハイネを見つけると片手を上げた。
『ん? んー……やっほ』
(軽い……けど、この感じはもしかして……)
その見た目は絵本の挿絵で見たままだった。輝く光に包まれた透き通った肌と眩しいほどの美しさ。
「この、クソ女…何の用だよ」
ハイネはぐいっとメイドと私をその光から庇うように立って、あからさまに眉間にしわを寄せた。女性は気にした素振りもなく、長くウェーブがかった髪をくるくると指先に巻きつけた。
『口が悪いわねぇ。別にトドメ刺しにきたわけじゃないから安心してよね。ゴホン、チャラリラ〜。貴方は愛する心を取り戻しました。よって呪いは解けるでしょう』
「は……?」
「え?」
「……!」
急に芝居がかって女神のように仰々しい話し方で宣言する。私たちは唖然と光に包まれた彼女を見つめた。
『解けるのよ。もう夜が明けたらあんたは普通の人間に戻るの。これからは愛らしい少年のままじゃなくてどんどん老けていくんだから、今度は老いて醜いから死にたいとか言わないでよね』
「……僕が老けたって醜くなるわけないだろ」
『その意気よ生意気ちゃん。あんたたちも振り回されて大変だったわね…そうでもないか。じゃ、また悪さしないか見張ってるからね。じゃ〜ねぇ』