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偽りの身の上〜身代わりの姫君〜
第6章 あいするひと
手を振りながら光は消える。そこには白い壁だけが残った。
呪いが、解けたのか。なんだかすごい軽いノリに実感がわかないけれど。
(もっとこう、光に包まれたら人間に戻るとかそういう……いや、いいんだろうけど)
ゆっくりハイネを見ると、彼は女神がいたところを凝視している。
「あの……ハイネ、様」
私の声にはっとしたように、ゆっくりとこちらを向く。背中の傷も痛むだろうし寝ていてほしいのだけれど、今の言葉を聞いてしまっては無理か。
「あの、よかったですね?」
「あ……」
彼は複雑な表情のまま、どこかまだ信じられないという顔をして、ベッドに寝たままのジバルに視線を向けた。
「ハイネ様」
心から安心したように、柔らかに目を細める。
ハイネはゆっくりと自分の手を見て、顔を覆う。それから唸りのような泣き声のような声を上げた。
「……うん」
「まあ! みんなに教えて来なきゃ! お祝いしませんとね! あっお嬢ちゃん、ハイネ様を寝かせておやりよ。みんなー聞いとくれー!」
私の返事も聞かずにメイドはバタバタと出て行ってしまった。残された私たちは、ただ静かに小さく涙を流すハイネを見つめた。