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偽りの身の上〜身代わりの姫君〜
第2章 連れられて身代わり

(まさか、人をこんな状況にして出ていった?)
私の疑問を肯定するように、耳を澄ましてみてもシンと静まり返っている。聞こえてくるのは自分の心臓の鼓動がわずかに速まった音だけだった。
「え……嘘、でしょ?」
――息苦しい。
数分か、数時間なのか、視界を遮断されて無音ではどれくらい経ったのか分からない。
両手は頭上のベッドの柵にくくりつけられ、目隠しをされ、唯一許された自由は息をすることくらいだろうに、それさえ上手くできない。
今まで触れたことのない上質なシルクの感触に足を滑らせながら、柔らかに沈むベッドに横たわった自分は、まるで肉食獣の檻に投げ込まれた生肉みたいだ。
「……」
ふと、自分とは違う距離から布擦れの音がした。
何者かが部屋に入ってきたのだ。
――否、相手はわかっている。
自分の鼓動が耳元でうるさくなって、その存在の放つ微かな音を聞き逃してしまう。
「――ぁ」
足に触れた。
その指は熱く、ゆっくりと私の着ているナイトドレスの合間を縫って太ももの内側へと向かう。同時に熱い息を感じて、無意識に体が強張った。
「ど、どうか、お願いします」
その震える喉で懇願を口にした。
腿の柔らかさを楽しむようにやわやわと触れていた指が止まる。
「これらを、外していただけませんか……どうか、」
がちゃりと両手の拘束具がなった。
しかし私の言葉など聞こえていないように、無慈悲に両足を割り開かれる。その羞恥につい足を閉じようとしても、力強い両手がそれを許さず、ぐっと体が割り込んでくるのを感じた。
懇願が聞き入れられることはなく、暴力的ともいえる初夜が嵐のように過ぎ去ったのだった。
***

