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偽りの身の上〜身代わりの姫君〜
第2章 連れられて身代わり

朝、眼が覚めるといつの間にか気を失っていたようで、拘束具や目隠しは外されて体も清められていた。
窓の外から聞こえる軽やかな鳥の囀りもどこか別世界の音を聞いているようで、まるで昨日の夜に心が閉じ込められてしまったみたいだ。
「……兄さん」
本当はきっと、体を許すだとか、姫の身代わりを演じるとか、そういうことをちゃんとよく理解してなかったんだと思う。今になってようやく、生まれて初めて感じるほどの強い恐怖とか痛みとか、喪ったものを実感する。――喪ったもの。
「そっか、私はもう、処女じゃないのね」
お姫様どころか、売女だ。
体で兄の命を買ったんだ。
そんな思いが頭を埋め尽くして、後悔なのか喪失感か、気だるい体を動かす気にもならず、一日中ベッドの上で過ごした。
夜になれば再び彼が姿を現し、また同じように目隠しと手枷をつけられて同じ夜を繰り返す。
「――あ、ああ、あぅッ、ううぅっ、ふあッ」
ずちゅずちゅと抽送を繰り返される中で、日を追うごとに、行為を繰り返すごとに私の中に存在していた快楽が目を覚ましていく。その変化も嫌だった。はしたなくて、認めたくなかった。それなのに体はいうことをきかず、あられもない粘液を股の間からタラタラと零しては淫猥な音を、卑猥なにおいを生んだ。
まるで動物だ。
金で売られた、卑猥な動物。
そうされることを本人の気持ちとは関係なく、遺伝子レベルで決められているような、抗いようのない快楽。
なんて卑しい生き物なんだ。私は。
そう自覚すると、少し笑えた。
そんな日を三日ほど続けた頃だった。
朝になると、また昨日のことなどなかったようにベッドに一人。手首に巻かれた拘束具の痕と、膣内がその形に慣れて今この瞬間でも挿入されているような錯覚を覚える感覚が、夢ではないと私に知らしめる。
ぼんやりと鳥の鳴き声を聞いていると、初めてハイネが朝食を運んできた。

