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偽りの身の上〜身代わりの姫君〜
第2章 連れられて身代わり

「い、いや、自分で食べるから……!」
「ダメですよ。そんなこと言って、倒れちゃったら僕が怒られます。ほら、ね?」
否と言わせない潤んだ目で見つめられて、さっきの想像も手伝ってなおさら断れない。
「あ、あー……ん」
耳まで熱くなるのを感じながら渋々口を開けると、彼はにっこりと笑ってまるで親鳥が雛にエサをやるみたいにひたすらパクパクと与え続けた。
確かに動物みたいとは思ったけれど、間違ってもこういう意味じゃない。
それでも確かにお腹は空いていたのか一口食べ始めると止まらなくなって、あっという間に持ってきていたヨーグルトは空になった。
「はい、よくできました。次はパンですね」
「ま、待って! 本当に、ちゃんと自分で食べるから!」
「そうですか?」
ハイネは食べさせるのを楽しんでいるのか、少し残念そうに肩を落とす。その隙に彼の手からパンを奪い取って、目の前でムシャムシャ食べて見せた。
ヨーグルトによってお腹が目を覚ましたのか、今まで全く気にならなかったのが嘘のように、空腹を自覚していた。
その様子に納得したのかハイネは立ち上がってパンツのポケットから何かを取り出す。
「わかりました。あ、お手紙が届いてますよ」
「手紙?」
久々に食べる柔らかなパンの美味しさに夢中になりかけた思考が止まる。手紙と聞いて兄さんの姿が思い浮かんだ。
「ええ、今朝早くに使いの者が。国王様からだそうですよ」
「ありがとう」
はやる気持ちを抑えて、ハイネが部屋を出るのを確認してから急いであける。予想通り、兄の筆跡だとすぐに分かった。

