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偽りの身の上〜身代わりの姫君〜
第2章 連れられて身代わり
身支度をしていると、ふと兄の手紙にあった、「心を病んだ王様」という言葉が浮かんだ。
今までたくさんの姫様を迎えて、その誰もが恐怖し姿を消してしまった引きこもりの王様。夜にわざわざ目隠しをするのは、もしかしたら醜い自分を恥じているからなのかもしれない。それなら、あの目隠しは……
「私への……気遣い?」
自分の声が耳に届いて、その言葉がはっきりとする。
それなら、思うよりずっと、彼はいい人なのかもしれない。
王様ともう少し話してみても良いかもしれない。実は話下手なだけで、それを伝えられないだけということもありえる。
私は荷物の中から一人でも着られそうなドレスを探した。
「……ここは、またゲストルームね」
早速王様と会おうと思ったら、自分の部屋からどう行けば謁見した部屋に行けるのかわからないと気づいて、今日は黒城の探索に決めた。
ハイネも朝以降見かけないが、王様のお世話でもしているんだろう。
あの太陽のような笑顔で案内してくれれば、広くて人気のない城内の探索もきっと楽しく過ごせただろうがワガママも言ってられない。
王様とハイネ、そして今は私の三人で使うには随分と広い内装。これが別棟なら居館はもっと凄いのだろう。目についた部屋から順番に開けていくと、ほとんどはゲストルームか備蓄庫ばかりでそれほど代わり映えしなかった。
「なんだかもったいないわね」
しばらく人の手がかかっていない、家具に白い布がかかった締め切った部屋たちは、王様と初めて会ったあの謁見の間にどこかよく似ている。
贅沢な品々なのに、しんと静まり返って薄暗く、物寂しい空間。
開ける度、似たような部屋ばかりに飽きてきて、もうハイネを探して案内してもらおうかと思い始めた時、少し雰囲気の違うドアを開けると、そこは今までと違っていた。
「ここは、……図書室?」
ゲストルームの二倍以上はありそうな空間に、見たこともない量の本が所狭しと並べられていた。
使う人がほとんどいないのか、もしくは王様専用なのかもしれない。本棚に隠れるようにして一番奥に重厚感のある艶やかな机と、座るとそのまま体が沈むようなふかふかの椅子が一脚あるだけだった。
「すごい……きゃっ」
高く積まれた本を見上げてふらふらと歩いていると、何かにつまづいた。