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偽りの身の上〜身代わりの姫君〜
第2章 連れられて身代わり
そこにあったのは、並んでいる他の分厚い本とは違い、薄くくたびれてはいるけれどイラストをメインにした、いわゆる絵本のようだった。
「なに?」
王様の子供の頃の物だろうか。転けたまま床に座り直し、その場で本を開いてみる。
「えっと……ひとりぼっちのおうさま、かな」
表題は掠れてしまってほとんど読めないが、パラパラと捲るとそれはどこか、聞いたことのある話の原文のようだった。
――むかしむかし、あるところに心の優しい王様がいました。
王様には心から愛するお妃様がいて、
国中の人々が二人の幸せを願っていました。
お城の庭には大きな女神像があって、
月と愛を司るその女神様を、
お妃様は大変気に入っておりました。
二人は女神像のそばで、何時間でも語り合って過ごしました。
そんなある日、お妃様は蛇によって心を惑わされてしまいます。
彼女は王様を捨て、召使いの男と心を通わせ、逃げてしまったのです。
王様は悲しみました。
何日も何日も泣き続け、お妃様の名前を呼びました。
いつしか愛情は憎悪へと変わります。
お妃様に関するすべてのものを燃やし始めたのです。
最後に残ったのはあの女神像でした。
「こんなもの!」
王様は杖を何度も叩きつけ、女神像を壊しました。
するとどうでしょう。
突然光の中から女神が現れたのです。
『愛を信じられない愚かなお前は、世界で一番醜い。今この瞬間から、その心の醜さを悔いて誰かに愛し愛されるまで、その姿のまま生き続けるが良い』
その光に覆われると、王様の姿はみるみるうちに変化し、
まるで魔獣のような禍々しい姿になってしまいました。――