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偽りの身の上〜身代わりの姫君〜
第2章 連れられて身代わり
確かに、姫という立場であったならそうなるだろう。私の場合では少し違う。けれどそれをハイネに言うわけにはいかない。口ごもっていると、彼はすぐに舌を出して笑った。
「……すみません。僕自身が親に見捨てられたようなものだったんで、つい意地悪しちゃいました」
「そ、そうなの……?」
思わぬ告白を聞いて面食らう。
ハイネはふと息を吐くと、またいつもの優しい雰囲気に戻って困ったような顔で笑った。
「ええ。だから羨ましくて。ごめんなさい」
「う、ううん、いいんだけど……」
ぺこっと頭を下げるその姿に、内心少し納得してしまう自分がいた。
私には兄がいたから孤児にならずにすんだし、一人ぼっちの孤独も知らずに生きてこれた。けれどハイネは親に見捨てられたらしい。もしかしたら、似たような境遇の王様を放っておけなくてお世話をしているのかもしれない。
同じく王様も、一人ぼっちで呪いや外見から城の奥に引きこもって、お世話をしてくれるのはハイネだけ。それなら、ハイネが大切な家族のような存在なのかもしれない。だからこそ、さっきの会話ではハイネの話の時に目に見えた反応をして、それをうまく言い表せなかったんじゃないか。
「ハイネにとって、王様が家族なのね」
「家族……?」
「二人とも、とてもお互いを大切にしているようだわ」
「それは……気のせいですよ。それより、ランチはうまくいきましたか?」
うまく話をすり替えられた。ハイネは若いし、そういう話は気恥ずかしいのかもしれない。
ランチのことを話したい気持ちも少なからずあって、私は眉間を寄せてうつむいた。
「ランチは……失敗しちゃったの」
「おやおや。あの人は気が利かないですからね」
「違うの。私が悪いのよ」
多分、触れられたくなかったのだ。普段は目だって合わせてくれないのだから考えてみれば当然だけれど、出すぎた真似をした結果なんだろうと今は思えた。
「ふーん。じゃあ、おしまいですが?」
「いいえ。また、明日のランチに再挑戦するわ」
「頑張りますね」
「だって、相手を全く知らないのに嫌いになりたくないもの。……やだ、私きっと、負けず嫌いなのね」
口にして初めて気づいたけれど、そうなんだと思う。負けたくないんだ。この立場から、知らなくて、ただ怖いだけで逃げだすのは嫌だ。
「……すみません。僕自身が親に見捨てられたようなものだったんで、つい意地悪しちゃいました」
「そ、そうなの……?」
思わぬ告白を聞いて面食らう。
ハイネはふと息を吐くと、またいつもの優しい雰囲気に戻って困ったような顔で笑った。
「ええ。だから羨ましくて。ごめんなさい」
「う、ううん、いいんだけど……」
ぺこっと頭を下げるその姿に、内心少し納得してしまう自分がいた。
私には兄がいたから孤児にならずにすんだし、一人ぼっちの孤独も知らずに生きてこれた。けれどハイネは親に見捨てられたらしい。もしかしたら、似たような境遇の王様を放っておけなくてお世話をしているのかもしれない。
同じく王様も、一人ぼっちで呪いや外見から城の奥に引きこもって、お世話をしてくれるのはハイネだけ。それなら、ハイネが大切な家族のような存在なのかもしれない。だからこそ、さっきの会話ではハイネの話の時に目に見えた反応をして、それをうまく言い表せなかったんじゃないか。
「ハイネにとって、王様が家族なのね」
「家族……?」
「二人とも、とてもお互いを大切にしているようだわ」
「それは……気のせいですよ。それより、ランチはうまくいきましたか?」
うまく話をすり替えられた。ハイネは若いし、そういう話は気恥ずかしいのかもしれない。
ランチのことを話したい気持ちも少なからずあって、私は眉間を寄せてうつむいた。
「ランチは……失敗しちゃったの」
「おやおや。あの人は気が利かないですからね」
「違うの。私が悪いのよ」
多分、触れられたくなかったのだ。普段は目だって合わせてくれないのだから考えてみれば当然だけれど、出すぎた真似をした結果なんだろうと今は思えた。
「ふーん。じゃあ、おしまいですが?」
「いいえ。また、明日のランチに再挑戦するわ」
「頑張りますね」
「だって、相手を全く知らないのに嫌いになりたくないもの。……やだ、私きっと、負けず嫌いなのね」
口にして初めて気づいたけれど、そうなんだと思う。負けたくないんだ。この立場から、知らなくて、ただ怖いだけで逃げだすのは嫌だ。