この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
偽りの身の上〜身代わりの姫君〜
第2章 連れられて身代わり

「逃げ出しません。私は、逃げ出したりしません」


人生で兄以外の人間に向けたことのない、喧嘩腰ともいえる強い口調で言い放っていた。

それもコンマ数秒のことで、すぐに我に返って一気に血の気が引いてしまうのだけれど。

(私、王様相手に何言ってるの……!)

アワアワする私を、王様はもう怒ってはいなかった。今まで見たことない新種の生き物でも見るように、奇妙なものを見る目で首を傾げていた。


「……変な女だな……お前」
「あ、ぅ」
「姫らしくない」
「っ!」

その言葉に心臓を直に握られたような気分になる。

(……バレた? )

ヒク、と喉を締められたような感覚に全身がこわばる。
王様の表情はほとんど読めず、私は全身の血の気が引いていくのを感じた。まさかこんなに早くバレてしまうなら、ルバルドにいたときに言われていてた「余計な話はなするな」という教えを守っておくんだった。

王様はじっと私を見つめる。その視線が訝しげに歪むのを感じた。
そして思い出したように手枷を手に取る。


「あ……」

私の手に巻かれる。

まるで罪人の証のように巻かれるそれが、いつもより重く感じる。

例えば今バレたなら、私はどうなるんだろう。兄はどうなるんだろう。治っていない状態で二人、国を追い出されるだろうか。そうしたらどうやって生きていけばいい? きっとすぐに山賊に捕まってどこかの国に売り飛ばされてしまう。


「どうやって育ったらそうなるんだろうな」

その言葉にまた、ぎくりとした。

姫らしい教育なんてここに来る途中の数時間。それより前は道端で物乞いだ。当然といえば当然だけれど、今まで張っていた気がガラスのように砕け散るのを感じた。


「……、ふ」


気づけばボロリと涙が溢れる。

兄のためになるならと、ずっと姫のふりを続けて、いい妃になるふりをしようとしていた。慣れないドレスもヒールも生活も、毎夜の痛みも文句を言わず懸命にしてきたけれど、それでもやっぱり私はお姫様にはなれない。そう言われている気がした。
/192ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ