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偽りの身の上〜身代わりの姫君〜
第3章 うそつき
鮮やかな緑の地面に転々と自然に育った草花が広がり、そのずっと遠くにはルバルドでもバーチェスでもない、見たことのないお城や町並みが見えた。
王様は先に降りてからランチボックスを受け取り、それを下に置くと私に向かって両手を伸ばした。それがひどく恥ずかしく思えて、手が伸びない。
「そ、そんな、恐れ多いです! 自分で降りられます!」
「そのドレスでか」
「……乗れたんだから、降りられます」
「オレが乗せたんだろう」
呆れたように言う彼に、少しムキになって足で反動をつけて自力で降りようとしたらガクリと腰に力が入らないことに気づく。
「あっ」
馬の振動か、緊張して強張っていたためか、このままでは着地できずに倒れる。地面にぶつかる衝撃に目を瞑ると、その体は別のものに乗りあげた。
「……」
「……」
そう、王様の肩とかに。
お腹あたりをキャッチされて、まるで俵でも持つようにそのままガシッと掴まれ歩き出してしまう。私の視界は逆さまだ。
「……私は荷物か何かですか」
「腰が抜けたんだろう」
自分で降りれると言っておきながら結局助けられてしまった。その無様な格好に恥ずかしさと、認めたくない気持ちと。
(まあ、認めるけど)
「……ありがとうございます。……ふふ」
「今度はなんだ」
湧き上がる笑いを抑えられなくて、両手で口を押さえてもクスクスと笑いが漏れ出した。訝しげな王様の声が聞こえる。
「だって普通に話しているんですもの」
昨日まで、ずっと嫌われているのかと思うくらい必要最低限にしか接してくれなかったのに、この少しの時間で普通に話せるようになっている。王様は無口だけど冷たいわけじゃない。それがなんだか嬉しくて、安心したのだ。
「……。ここでいいか」