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偽りの身の上〜身代わりの姫君〜
第3章 うそつき
今まで穏やかな雰囲気だった王様が、少し考えるようにして首を振る。
「昨日ハイネさんと話してたんです。お二人は家族みたいですねって」
「……彼は、否定しただろう」
「いいえ、ピンときていないようでしたけど、でも、そういうものですよね。私も……」
兄さんとの話をしそうになってギクリとする。この雰囲気はまずい。うっかり口を滑らせてしまう。
「なんだ?」
「あの、父と、昔はそうだったなって……。あの、ハイネさんはいつ頃から働いているんですか?」
話をそらさないとと急いで話題を変えたけれど、案外いいことを聞いたんじゃないか。王様は少し考えてから、口を開いた。
「彼とは……ずっと前だ。幼い時に助けられて、それ以来ずっと」
「助けられて?」
「ああ……一人だったのを、彼が救ってくれた。だから、オレは……、」
一人というのは、呪いをかけられたという時期なのかと想像する。リジーもお妃様が亡くなったとか言っていた。
(……そっか。家族がいたのね)
髪やヒゲに隠れて見えない顔。そんな彼にも幸せな時、妻と子供に囲まれていた日々があったのかと想像すると、なんだか腹の底にもやっとするものが淀む。
思い出すようにポツリポツリと語る王様は少し手負いの獣みたいに弱々しく見えて、私は口を開く。
「あの、親に見捨てられたとか……」
「っ」
王様がばっと顔を上げる。その勢いで少し前髪が払われて、顔があらわになりそうなところを大きな両手で隠した。少しは気を許してくれたと思ったけれど、やはり顔までは見せられないらしい。残念だけれど、しかしその仕草は私よりもむしろ彼自身が自分を見られるのを恐れているように感じた。
王様は誤魔化すように咳払いをする。
「っ……家族に?」
「……ええ、ハイネさんが、自分は見捨てられたからって」