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偽りの身の上〜身代わりの姫君〜
第3章 うそつき
「それは、君だけの問題かな」
ふと、今までと違う真剣なハイネの声が響く。
「え?」
「君のお兄さんの病気がどんなものかは知らないけれど、国がしっかりしていればある程度の病気は抑えられる。薬だって買える。君たち二人が今まで満足にご飯を食べてきてないのは君を見れば明らかだよね。それだって、僕から言わせれば国の怠慢だよ」
「ハイネ……?」
「……まあ、ルバルドは王族の贅沢で自ら首を絞めているようなものだから、その皺寄せが国民にいくのは当然か」
なにやら難しいことを苛立った調子で捲し立てる。ほとんど独り言のようにそう呟いてから寝室から出た私に視線を向けた。
「ああ、似合ってるね」
「ありがとう。メイドなのに、こんな可愛い服が着れるなんて嬉しい」
ドレスよりも裾の短い黒を基調にしたクラシックなエプロンワンピース。上品でふわふわとしたパフスリーブが可愛くて、下働き用の服でもこんなに可愛いなんてついつい笑顔がこぼれる。ハイネは首を傾げてから笑った。
「お姫様からメイドにグレードダウンしたのに喜ばないでよ」
「だって、こっちの方がなんだか落ち着くの。きっと煌びやかなものに向いてないのね」
「ふふ、ドレスも似合ってたけどね。……さてと。今日からは忙しくなるから、ちゃんとお仕事を覚えてよね」
「が、頑張ります!」
しかし実際、私の仕事は少なかった。どうやら白城にいるたくさんの召使いたちがほとんどの仕事をこなしているので、私のやることはその人たちが侵入を許されていない黒城の掃除と王様の身の回りの世話になるようだ。
「部屋は数が多いけど、ほとんど使ってないからね。一日で全部じゃなくて、順番に出来る範囲でやればいいよ」とはハイネの言葉で、それなら聞いていたよりも大変じゃないのかもしれない。三食は確実に得られるし、今まで使っていた部屋もそのまま使っていいらしい。ハイネはグレードダウンと言ったけれど、物乞いをしていた頃に比べれば格段にグレードアップしたと考えて良いだろう。
「――お茶をお持ちしました」