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偽りの身の上〜身代わりの姫君〜
第3章 うそつき
今日の早朝に国を出たんだろうか、外に出ると鮮やかなオレンジの光が世界を覆っていた。もうすぐ夜になる。
行き慣れた門を見ると、その近くに白馬とそれを連れた騎士然とした人の姿を確認できる。その格好は私がバーチェスに連れてこられた日の護衛と同じで、少し懐かしい気持ちになった。
(あの時は、自分がこんな気持ちになるなんて思ってもなかったな)
騎士がこちらに気づき、顔が分かるほど近づいていくと、あの日ドレスを踏んでこけそうになったところを助けてくれた護衛本人だった。
「あ」
「姫様……? その格好は」
ぎょっと目を見開く騎士に私は自分がどう見てもメイドの服に身を包んでいることを思い出した。あまりにしっくりきすぎていて、そして兄さんからの手紙を持ってきてくれたのかと思うと気がはやって気がつかなかったのだ。
「あ、いえ、これは……」
「姫様~っ」
慌てて言い訳を考えていると、城の方からハイネが走ってきた。
「……ハイネ?」
「ああ、姫様、やっと追いつきました。着せ替え遊びは城の中だけにしてくださいって言ったじゃないですか」
ゼエゼエと肩で息をして、心底困ったようにハイネが語る。これは、間違いなく助け船なんだろう。
「あっああ! ごめんなさい、手紙がきたのかと思うと嬉しくて」
「着せ替え……そうでしたか」
騎士も納得した様子で頷いている。ハイネ、出来る子。
短時間で息を整えたハイネは改めて騎士を見て首を傾げる。
「あれ、最初の日に会いましたね」
「はい。姫様の様子を直接伺うようにとの命を受けまして、再び参上いたしました。ルバルドの騎士、ユーリと申します」
騎士らしく、胸元に手を当てて頭を下げる。その一瞬、ちらと私の方に視線をやったのは気のせいだろうか。
「……。バーチェス国王の執事をやっております、ハイネです。最近は姫様のお世話もね。遠路はるばる来ていただいたのですが、王様は他国の人間が城にはいることを嫌がりますので、このような場での面会をお許しくださいね」