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偽りの身の上〜身代わりの姫君〜
第3章 うそつき

ユーリは私の反応などお構いなしに、今度は舌を這わせウネウネとナメクジのように胸元を這い回る。一気に鳥肌が立って叫びたい衝動に駆られたが、恐怖で声が出なかった。
「しかし今日、一目見て分かりました。全身から漂う男を惑わす妖艶な色気。貴女は私の愛した女王様だ」
「い、色気!?」
そんなこと生まれてこのかた一度も言われたことがない。
まさか夜な夜な見る淫靡な夢にあてられてしまったのだろうか。それをまさか王様やハイネまでもが感じ取っていたなら、恥ずかしくて部屋から出れない。
いや、その前に無事に城に帰ることが先決なのだけれど。
彼の頭は遠慮を知らずどんどんと服の中に顔を突っ込んで、探し当てたとでも言うように胸の突起にたどり着く。
「はあ、愛らしい私の果実。またお会いしたかった……んむちゅっ」
「ひゃああっ! ね! ねえ、ユーリ? 私に手紙とか、預かっていない、かしら?」
夢中になってチュバチュバとまるで赤子のように吸い始める。それはもう体験したことのないおぞましさで、私は逃れるために頭がフル回転する。
とにかく兄の手紙を貰って、隙を突いて逃げ出そう。ここまでは馬にも乗らず歩いてきたからそう遠くはないはずだ。
私の問いかけにユーリはそこで初めて思い出したように尻のポケットから皺くちゃの手紙を出した。
「国王とは仲が悪かったのに、いつからそんな親孝行者になったんです?」
「い、いいじゃない」
王様と姫様が不仲なのも初耳だけれど、正直そんなに驚くことでもない。もとより、国の支援を確保するために悪名高い国に嫁入りさせようとする王様と、使用人たちと楽しんでいる姫だ。そう考えれば確かにあの二人は親子に違いない。
さっさと手紙をポケットに仕舞いこんで、さていつ逃げ出そうかと考えているとユーリの目の色が変わる。
「まさか……他の男とのやりとりを私にさせたのですか!」
「あうっ」
木に押しつけるように私の体を掴む。
他の男といえば兄も男だからそうなるだろう。しかし彼に頼んだというよりは勝手に来たのが正しいけれど、今の彼には多分何を言っても無駄だ。

