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偽りの身の上〜身代わりの姫君〜
第3章 うそつき
「あの騎士は、他の者に任せた」
王様は城に帰ってから私の部屋まで運んで、自ら私の腫れた足に氷袋をあててくれた。
ユーリのことは正直自分が逃げるのに必死で、言われるまで忘れていたけれど。
「よかった」
「……一緒に帰りたかったか?」
ふと、そんなことを聞かれた。
王様はじっと私の足首の付近を見て俯いているが、それは胸元が破かれているせいもあるんだろうか。手で抑えてはいるけれど、まるで王様を裏切った証拠のようで嫌だった。
「いえ! あの方は……その、アメリア様のお知り合いで」
「人違いされたか」
頷いて小さく口元だけで笑う。こんな笑い方も出来るのか。今までよりもずっと自然な姿に見えて、嬉しかった。
「あ、あの、国に、ルバルドに抗議しなかったって」
「……ああ」
「ありがとうございます」
「いや……、いい」
王様はそれについて思うことがあったのか、少し何か考えるようにしてから頷いた。そのまま立ち上がって部屋を出ていく。
「今日はもう休め」
「あ、」
「……なんだ?」
今日も、抱かないんだろうかとか、さっきはキスしてすみませんとか、そういう色々を考えたけれど、キスした後の悲しげな目を思い出して首を振った。
「今日は、ありがとうございました。おやすみなさい」
「お休み」