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偽りの身の上〜身代わりの姫君〜
第4章 孤独な牢獄
しかし最後の方はまるで、すねた子供みたいだった。ころころと表情を変える彼に、私は少し戸惑う。
もしかしたらハイネもまた、王様の幸せを願っているのかもしれない。それが思い通りにならないのが嫌なのだろう。
「私は、恋した経験がないから分からないけれど……、好きになるのはそういうことじゃないと思うわ」
無意識にぎゅっと胸元を握る。
胸が痛くなったり、ドキドキしたり、どうでもいいことで喜んだり落ち込んだりして、その感覚なら少しは分かる気がする。
「どういうこと?」
「多分ね、ええっと……、人を好きになるのはお金持ちとか、王様とか、そんなの関係なくて、優しいとか、いつも助けてくれるとか、たまに目が合うと笑ってくれるとか、そういうことの積み重ねなんじゃないかなって思うの」
知らず王様のことを思い浮かべながら語っていて、それに気づくとカアッと耳が熱くなるのを感じる。しかしハイネはぴんとこない様子で、怪訝な顔で首を傾げるだけだった。
「じゃあ、君は僕が優しくしたら、僕のことを好きになるの?」
さっきの大人びた表情はどこへやら、急にそんなことを言う。
「えっ……ハイネはずっと優しいじゃない」
「僕が優しい?」
「ええ。ここに来てから、ハイネはずっと私に優しかったわ」
ハイネはなぜかとても理解できない顔をしてから、口を開きかけた。その時、城の外でドンッドンッという爆発音がして飛び上がる。
「きゃっ! な、なに!?」
「ああ……、花火だよ」
「花火……」
窓の外を見ると、晴天の空に小さな煙か雲かというものが漂っている。
「初めて聞いたわ」
「あはは。花火は見るものだからね」