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偽りの身の上〜身代わりの姫君〜
第4章 孤独な牢獄
そのためにはまず通常通り仕事が出来るところを証明しなくては。と思ったのだけれど、どこも私の部屋が三つほど入りそうな大きさの衣裳部屋だの広い空間を贅沢に使ったピアノを置いた謎のホールだのととにかく広い。

次々ドアを開けていくと、一つだけ明らかに他のドアとの距離が近いものがあった。小さい部屋であれと望みを託して開くと、そこは今までとは明らかに違う一室だった。


締め切っている空間特有の埃っぽさと、けれど人の気配漂う絶妙なにおい。そしてこの城ではじめて見るほど、その部屋は小さく、荒れていた。まるで闘牛を放ったようにあちこち壊された家具が雑に放置され、大きく割れた鏡や引き裂かれたカーテンが見えた。

その家具の間を縫うようにそっと中に入っていくと、一番奥に小さな窓が夕暮れの光を取り込んでいるのが見えた。その陽をスポットライトのように浴びて、寝ている小さな存在を見つける。


(……ハイネ?)


何で壊したのかも分からない、派手に折られ、所々割れた木目が見えている箪笥に背を預けるようにして、両足を放り出してすやすやと眠っている。その近くには、いつか見た絵柄の本が落ちている。しかし見たことのない絵だ。


「……?」


彼が起きないようにそっと手を伸ばして拾ってみると、それはあの絵本の引き裂かれた続きのようだった。

(確か、王様が女神様に呪いをかけられるところで終わってたのよね)

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