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偽りの身の上〜身代わりの姫君〜
第4章 孤独な牢獄


 王様は嘆き悲しみました。
 もう誰も、王様を呪いから救ってくれるはずもなかったからです。


 それから何年も経って、王様の国は王様一人になっていました。

 家臣たちや国民は呪いを恐れ国を去り、
 王様は呪いをかけられたその時から、歳をとらなかったからです。



 廃墟となったお城に一人で過ごしているある日、
 王様のことなど何も知らない旅の途中のお姫様が立ち寄りました。


「誰かいますか?」


 王様はまたお姫様が自分のせいで死ぬのを見たくありませんでした。


「いいえ、誰もいません」


 お城の中から答えます。


「あなたは誰ですか?」

「誰でもありません」

「付き人とはぐれてしまったのです。少しここにいさせてください」

「好きなだけどうぞ」


 王様はお姫様がいる間中、ずっとお城の中に隠れていました。

 お姫様は付き人を待っている間、色々なことを訪ねました。


「空はなんで青いのですか」
「犬はなんで鳴くのですか」
「この先にはどんな世界があるのですか」


 王様は長い間一人で過ごしていたので、なんでも知っていました。
 お姫様は知らないことばかりで、たくさんのことを知りたがりました。


 お姫様の質問全てに答える頃には、もう何年も経っていました。


 お姫様は長い長い時間をかけて得た知識で、
 付き人とはぐれたのではなく、自分は捨てられたのだと気づきました。



「あなたの姿は見られないのですか?」

「私を見ると、人はみんな死んでしまうのです」

「見せてください」


 王様は驚きました。
 そんなことを言う人が、今まで一人もいなかったからです。

 ずっと話し続けている間に、王様はお姫様を
 この世で一番失いたくないと思い始めていたのです。



「私は死んでもいいのです。ただ、唯一私に親切にしてくれた
 あなたの顔を一目見たいのです」


 お姫様はかたくなで、話し合いは朝な夕な続きました。
 そしてついに、王様は泣く泣くそのお願いを叶えることにしました。


 はじめて見るお姫様は、まるで天使のようでした。

 王様を見るとお姫様は言いました。



「まあ、なんて素敵な人!」



 いつの間にか、王様の呪いは解けていたのです。

 王様はすぐにお姫様と結婚し、二人はいつまでも幸せに暮らしました。――

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