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偽りの身の上〜身代わりの姫君〜
第4章 孤独な牢獄
「ミア?」
「あっ、あの、大丈夫です。すみません……失礼します」
「待て」
横を足早に通り過ぎようとすると、声が響く。私はこの声に逆らえない。足が地面に縫いつけられたようにピタリと止まった。
「部屋に来い。そんなに働きたいなら、足の具合を見てからだ」
私は頷くことしかできなかった。
どうしようもなかったことだとしても、ユーリに口付けされ、ハイネに布越しに秘部を触られたことは王様に対して裏切ってしまった後ろめたい気持ちを持つには充分だった。
それと同時にハイネに言われた言葉が頭の中で繰り返される。
――王様という地位だから態度を変えない。
確かにその通りかもしれない。それならこの後ろめたさは王様にとって関係ないことで、姫じゃない私はその他大勢と同じく、使用人の一人ということになる。
(気にしているのは私だけで、この人にとっては大して気にするようなことでもない……)
その方が楽なはずなのに、気持ちは沈んでいく。
私だけが、姫の身代わりでいることを抜け出せないでいる。
「……」
「痛むか?」
薄暗い部屋のソファに座らされて、靴を脱がされ、王様は跪いて裸足の足を躊躇なく、まるで壊れやすい陶器を扱うようにそっと触れて確認する。
「……いいえ」
その温かい手にいつまでも触れられていたい。
反面、私のはしたない部分がその大きな手を滑らせて、私をソファに沈ませ、下着をわって乱暴にその肉棒を突き入れてくれないかと熱望する。
さっき半端に触れられたせいか、そこはもうそんな想像だけでジュク、と切なくなった。
「……ふん。まあ、いいだろう。あまり無理はするなよ」
私の気持ちとは裏腹にあっさりと手を放され、足に残る彼の体温がじんわりこの体に染み込んでいくのを感じる。
王様は立ち上がり、私に背を向けた。
ハイネが持ってきたんだろう、ティータイム用のカップやポットを盆にまとめていた。
その後ろ姿に、私はふとあることを思いついて立ち上がる。それは、ある種の賭けだった。
「……さっきは、何かあったんじゃないのか」
「いいえ、何も」