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偽りの身の上〜身代わりの姫君〜
第4章 孤独な牢獄

バタン、とやけに大きく聞こえるドアの音がいつまでも耳に残る中、王様が最後に触れていた乳房に自分の手をあてる。


「……ドキドキいってる」


心臓を直に掴んでいる錯覚に陥りそうなほど、破裂しそうな鼓動の速さに薄ら笑いを浮かべた。


王様の答えは、ハイネの言葉を肯定する。

平等に扱わなければいけない。本当だ。王様は召使いを平等に優しく扱うんだろう。だから、私はもう抱いてもらえない。今以上に愛されることもない。

腿を伝う愛液はたらたらと膝の裏まで伝っていたけれど、急に我に返ったようにその熱を失い、すぐに冷たくなった。




「……」


それからどれだけその場に立ち尽くしていたのだろう。

ゆっくりと止まっていた時間が動き出すように、部屋のどこかにあるカチカチという時計の秒針が耳に届いて、のろのろと服を着て部屋を出た。


廊下はもう真っ暗だった。

そういえば夜が更けてから部屋の外に出るのは初めてだと気づいた。


(……いえ、ユーリと山賊に襲われて……)


王様に助けられて連れて帰ってきたときだ。まだ昨夜のことなのに、まるでずっと前のことのように感じてしまう。

昨日はもっと遅い時間だったけれど、廊下の灯りはついていたはずだ。


ふと、さっき読んだ絵本にあった、王様以外誰一人いなくなった城に迷い込んだような錯覚に陥る。

今までの華やかな世界は全ておとぎ話の中の話で、お姫様という魔法が解けてしまったせいで現実に引き戻されたみたい。本当は最初から、暗く薄ぼんやりとした寒々しいお城に、一人ぼっちでいたのかもしれない。


(なんて……ばかみたい)


無意識に音を立てないようにそっと歩き出すと、冷たい風が仄かに感じられる。廊下に面した窓がなく、真っ暗な中に点々と補助用の蝋燭が僅かに灯っている。けれど十分ではないその微かな明かりでは、自分の部屋のドアの位置を確認するのが精一杯だろう。

ゆらりと時折消えそうなほど大きく揺らぐ火がまた恐怖心と心細さを煽った。
ハイネと王様はどこに行ってしまったんだろう。



「……、?」
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