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偽りの身の上〜身代わりの姫君〜
第2章 連れられて身代わり
「姫様は国王様の一人娘です。社交的で笑顔の耐えないお方。先方にもそれくらいの話はいっているはずですので、お兄様のお話はお控えください」
「き、気をつけ……ますわ」
「よろしい。姿勢もお気をつけください」
ぎこちない言葉遣いに気をとられると、今度は背筋が丸まっていたのか腰を軽く叩かれた。
それほどクセのある言葉遣いではないが、姿勢に目線に言葉遣いにとなると頭がこんがらがってくる。こんなのバーチェスに降り立った瞬間に見破られるかもしれない。
そんなことを思っているとリジーがため息をついた。
「……個人的には、あなたに同情します」
「え?」
「兄弟のためとはいえ、住み慣れた国を離れ一人で嘘を突き通すのは大変なことでしょう。ましてやバーチェスになんて……」
その言い方に、私は今まで気になっていたことをようやく聞けると思った。
「あの、私はずっと城下町の隅っこの方で生きてきたので詳しく知らないんですけど、バーチェスの国王様っておとぎ話の王様ですよね?」
実はそれほど多くは知らないのだ。子供たちの間で噂される話なんて現実味がなくて、どこからが本当でどこからが嘘かも分からない。面白ければいいのだ。けれど、実際に会うなら話は別。
「ああ、そうでしたね。私も実際バーチェスに行くのは初めてですが、このブルビリア地方で一番大きく、また一番発展しているのがバーチェスです。国王様が例の……人前に出なくなってからしばらくして急激に国が豊かになったものですから、近隣の国からは悪魔と契約したのではないかとも噂されております」
そういえば国王も支援がほしいから結婚させたいとか言っていた。
確かにルバルドは最近になって路上で暮らす子供も増えてきている。元から治安がいいとはいえない界隈だったけれど、最近は特に、しょっちゅう喧嘩やスリ、引ったくりなども増えていて兄さんはそんな中を私が歩き回るのを快く思っていないようだった。
しかしそれで支援を求める先が、悪魔と契約したと噂される国とは……。
「国自体は他の発展国とも頻繁に取引をしているので住みやすい、とは言われておりますが、何せ王様が……」