この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
陽炎ーもうひとつの物語ー
第7章 独り
思えば、仕舞いにばっかり気を取られて、ちゃんと足元を見てなかったのかも知れねぇ。
玄人気取んなら、最後まで気ィ抜かずにやりやがれ。
いつもなら躓くはずのない、小さな石に蹴躓いた、そんな感じだった。
屋敷の中、お宝を掠めてずらかろうとした時。
足元で餓鬼の声がした。
「ちちうえさま…」
いつの間にか、二、三歳の餓鬼が足元に居た。餓鬼は俺の正体に気付いているわけではなさそうで、眠たげに目をこすりながらしっかりと俺の着物の裾を握っている。
怖がらせて声でも上げられた日にゃ一貫の終わりだ。
冷たい汗が背を伝う。
俺は出来るだけ穏便に餓鬼を離そうとしゃがみこみ、餓鬼の肩に手を掛けた。
その時、手下の一人が餓鬼に気付く。
「この餓鬼ッ、頭から離れろ!」
獲物を餓鬼に突き付けて脅す手下に
「馬鹿野郎!でけぇ声出すなッ!」
立ち上がり、餓鬼を獲物から離して思わず怒鳴った。
「曲者!小太郎から離れろ!」
大人の男の声とともに、パンッという何かが爆ぜるような音が聞こえ、同時に、脇腹に焼けるような痛みが走った…
玄人気取んなら、最後まで気ィ抜かずにやりやがれ。
いつもなら躓くはずのない、小さな石に蹴躓いた、そんな感じだった。
屋敷の中、お宝を掠めてずらかろうとした時。
足元で餓鬼の声がした。
「ちちうえさま…」
いつの間にか、二、三歳の餓鬼が足元に居た。餓鬼は俺の正体に気付いているわけではなさそうで、眠たげに目をこすりながらしっかりと俺の着物の裾を握っている。
怖がらせて声でも上げられた日にゃ一貫の終わりだ。
冷たい汗が背を伝う。
俺は出来るだけ穏便に餓鬼を離そうとしゃがみこみ、餓鬼の肩に手を掛けた。
その時、手下の一人が餓鬼に気付く。
「この餓鬼ッ、頭から離れろ!」
獲物を餓鬼に突き付けて脅す手下に
「馬鹿野郎!でけぇ声出すなッ!」
立ち上がり、餓鬼を獲物から離して思わず怒鳴った。
「曲者!小太郎から離れろ!」
大人の男の声とともに、パンッという何かが爆ぜるような音が聞こえ、同時に、脇腹に焼けるような痛みが走った…