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陽炎ーもうひとつの物語ー
第7章 独り
アジトの家まで運び込まれた俺は、
囲炉裏近くの板間に敷かれた床に寝かされる。

既に意識が遠のきかけ、視界は虚ろだった。

赤猫の他にも、みんな揃ってるんだろう、ということはなんとなくわかった。

口の中に何かが投げ込まれる。
痺れと痛みに苦味が混じったような、表現し難い刺激と、鼻に抜ける刺激臭。口の中に水が入ってきて、ゴクリと飲まされると、喉が焼けるようで、思わず目が開く。
目の前に見えたのは、赤猫の顔だった。
赤猫が近くに居る。
それだけで無性にほっとした。
「ヘタ、うっちまったな…」
それだけ呟いた。

兵衛の声が聞こえる。
なんと言ったのか、頭が理解するより先に、猿ぐつわを咬まされた。
傷の処置をするということなのだろう。
そして、傷口に、更に焼けるような痛み。何をされているのかはわからないが、おそらく傷が膿まぬよう、焼酎を掛けられたのだろう。
兵衛がよく傷口にする奴だ。
思わず身体が跳ね上がる。
何度かその痛みに襲われた。
心の臓が暴れるように、ドクンドクンと脈打っている。
それに伴い息も荒くなった。
身体中を血が駆け巡っているようで、その度に血も噴き出して居るのだろう。

意識はあるが、頭はぼうっとして、何も考えられなかった。





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