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エンブレム──奴隷契約編
第8章 服従の日々
この日、麻美と圭介が校門を出た時、時刻は既に午後七時を回っていた。
いつもは握る手も今日はお互いに握ろうとせず、麻美も圭介も終始無言で薄暗い歩道をトボトボと駅に向かって歩いていた。
道中、突然圭介がピタリと立ち止まった。
「麻美、明日もあいつの言いなりになるつもりか?
「だって……仕方ないじゃない。圭介君のためだもの」
「こんなの間違ってる。麻美、明日あいつの所に行くのはやめろ。あんな奴の言いなりになるくらいなら俺はどうなったて良いんだ。これから警察に行ってあいつにされた事を言ってこよう」
「それは駄目……」
麻美はうつむきながら呟いた。
「なんでだよ!あんな事されても平気なのか!?俺はどうなったって良いって言ってるだろ!」
圭介の言葉を聞いて麻美は少し寂しくなった。
なぜその言葉をもっと早く言ってくれなかったのか、なんで今さらと圭介を恨めしく思った。
そして“あの時”なぜ田島が大笑いしたのか分かったような気がした。
「だって……もし警察に言ったら圭介君達の夢が消えちゃうもん。そしたら今日私がした事が全て無駄になってしまう。それに今日の事をみんなに知られるのは絶対嫌……」
麻美は今にも泣きそうな顔で圭介から顔を逸らした。
「ぐっ……」
圭介は言葉が出ない。
道端に落ちていた空き缶を思いきり蹴り、やりどころの無い怒りを晴らすしかなかった。
「くそっ!ちくしょーっ!なんでこんな事になっちまったんだよ!」
「圭介君……私の事は気にしないで練習頑張って。先生も言っていたじゃない、予選の間だけだって」
「ごめん麻美……本当にごめん……」
圭介は謝るしかなかった。