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捨て犬
第14章 食べたい?
とりあえず俺は
エミに事情を説明し
バイトするとしたら
萩原のパン屋は
最高の場所だと伝えた
「どう?エミ」
「ちょっと…怖い」
あぁ…そーか…
ま、知らない人ばっかだもんな
そもそも
バイトなんて
はじめてだろうし
けど
それなら
尚更いいバイト先なんだけど
「あのさ・・・
俺は
エミに金を稼いで欲しい訳じゃないんだ
今、エミは俺と普通に話出来るだろ?
けど、最初は話なんてできなかった
エミはさ
そーなるまでに
人よりきっと時間がかかるんだよ
だから少しずつ
人と接することに
慣れたらいいんじゃねぇかなぁ
って俺、思ったんだ
俺の気持ち、わかる?」
エミは大きくうなずいた
「それには
すっごくいいバイト先だと思うんだよ、俺。
萩原のかぁちゃん
めっちゃいい人だし
それに
エミに向いてると思うんだ
この仕事。
エミ、綺麗好きだし
食器洗うの得意だろ?」
「うん」
「あと最後にもーひとつ。
しばらくしたらさ
パン作りも
教えてくれるらしいんだ」
「え?」
エミの表情が変わった
もう一押しだ
「エミがさ
パン焼けるよーになったら
俺、エミが焼いたパン食いてーな…」
「………」
エミが黙りこくった
がんばれエミ
一歩踏み出そうぜ
そう思いながら
俺は黙ったまま
タバコに火をつけ
エミの返事を待った
その間
俺は吐く煙で
ドーナツをつくった
そして
俺が作ったドーナツが
何個消えたのか
もう数えるのも嫌になったころ
エミが
やっと顔をあげた
「パン…食べたい?」
「食いたい」
「私にできる?」
「できるさ、そんな心配すんな」
「…うん」
「どーする?」
「やってみる」
ふぅ~〜~
今度はドーナツを作らず
俺は思いっきり煙を吐いて
タバコの火を消した
「大丈夫だからな?」
黙ってうなずく
エミを見てると
なんか…俺、親みてーだな
って思った