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捨て犬
第16章 もう言うなっ
照れてるのか
なんなのか
エミからの返事はなかったけど
俺は満足していた
俺に抱きつく
エミの手に
ぎゅーって
力が入ってたから
「記念のビールだから
エミもちょっと飲んで」
そう言って
ほんの少し
口移しでエミに
ビールを飲ませると
自分で稼いだ金で買ったビールだからか
エミは
少し嬉しそうな顔をした
「うまいな、エミ」
「うん」
それから俺は
エミの髪を何度もなでて
足の間に座らせ
エミを後ろから抱きしめた
「エミ・・・
いい子だなぁ
お前さ
ほんとにいい子だよ・・」
「そんなこと・・ない」
「いい子だよ、エミは」
「悪い子だって
ダメな子だって
いつも言われてた・・」
「えっ?」
その瞬間
エミの身体が硬くなった
「悪い子だから
だから・・・たたかれた」
ど、どした?
エミ、震えてんじゃん…
「ダメな子だから
これくらいしろって
パパが・・・・」
やべぇ
エミの様子がおかしい
震えはどんどん
ひどくなって
声の感じも違う
「これくらいいいだろって
パパに・・パパに・・」
「もう言うなっ!」
「・・・・」
かわいそうに…
お前が
痛くて
たまんねぇよ…俺
「大きな声出してごめんな?
分かったから
その話はもういいよエミ
こっち向いて」
できるだけ優しく
精一杯穏やかな声で話しかけ
俺は
エミを振り向かせた
優しくキスしてやろうと思ってたけど
エミの震えがひどくて
キスなんかできない
俺は
震えを止められないまま
肩で息をするエミを
優しく抱きしめながら
何度も背中を撫ぜ続けた
「俺にとっては
とってもいい子だよ
こんなにいい子はいねぇ
俺が気に入ってるんだ
それでいいだろ?エミ」
「……ん…」
少し落ち着いてきたエミは
俺の胸の中でうなずいて
もっともっと
ぎゅーって俺にしがみついた
思い出すなよエミ
違うこと考えるんだ
そんな辛いこと
思い出しちゃだめだ
エミの顎を持ち上げ
唇を舐めると
エミは少し
くすぐったそうにしてから
俺に
小さな小さな舌を差し出した
その
可愛らしい舌を
一度指先で触れて
それから俺は
エミの弱い
舌先を舐めまくって
エミの頭を
真っ白にさせたんだ
何一つ
思い出させないように