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捨て犬
第16章 もう言うなっ
それから俺は

エミが
痛いんじゃないかと思うくらい
力いっぱい
エミを抱きしめていた


エミの震えを
止めるためじゃない


怒りが
込み上げてきて
どうしようも
なかったんだ


なんなんだよ!
お前の子供じゃねーのかよ!

なんで
自分の子供に
そんなことすんだよ!

そのせいで
エミは
こんなに怯えて…


怒りと悲しみが
一気に溢れてきて
止まらない

くそっ


「カズっ…」


「どした?」


「カズマ…」


ただ
俺の名前を呼びながら
すがりつくエミが

切なくて


愛おしい


「よく逃げてきたな
ほんと
逃げて来られて
……よかった」


それから俺は
何度も何度も息を吐いて
自分を落ち着かせながら
エミの身体をさすり続けた

まだ震えてるエミを
とにかく
落ち着かせてやらないと


「エミ・・・
そんな夢
よく見るのか?」


「・・ん・・時々・・」


かわいそうに…


「見るたびに
外に行ってたのか?」



「・・・ん・・」



そんなことに
気付いてなかった
自分が

やるせない

ごめんな…エミ…


「今度から
その夢みたら
俺を起こせよ・・」



「・・・・・」



「俺を起こして
怖い夢見たって
俺に言ってくれよ」




「・・・・・」




「それで
俺に抱きついて
俺の前で泣いてくれ」




「迷惑かけちゃ・・」

「迷惑なんかじゃねぇ!!」



「・・・・・」



「そうして欲しいんだよ

俺は・・・

エミに
ひとりで泣いてほしくないんだよ



エミが



好きだから・・」






「カズマ……」






「頼むから

俺の前で泣いてくれよ

急に…

急に居なくなったり
しないでくれよ…エミ…」





「カズマ……」




それから
エミの震えは
だんだんと消え去り

エミの身体から
力が抜けていくのが
分かった


そして
エミが俺に
体重を預けはじめた頃には

もう

ぐったりとしていた













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