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第19章 今日もあなたを待っています

僕は駅でいつも彼女を待っていた。
でも彼女は現れなかった。
彼女の家の近くまで彼女を探しに行ったが、彼女の家を知らなかった。
彼女の苗字も知らない…
連絡先も知らない…
家族構成も知らない…
仕事も知らない…

何にも知らなかった。

1年も経つと本当に彼女は実在していたのかも分からなくなってきたのだ。
でも、彼女が置いていった歯ブラシを見ると、いつかきっと会えると思ったりもしていた。



休日出勤の代休で平日休みが取れ、僕は買い物に出掛けた。
彼女の家の近くのスーパーだ。
本当に彼女の家に近いのかは分からなかったが、このスーパーの近くまでいつも彼女を送っていたのだ。

いつも駅前の商店街で買い物を済ませていたが、たまにはスーパーに行こうと思ったのだ。

スーパーに入るとベビーカーの車輪がカートの車輪と当たり困っていた女性がいて、僕はカートを引っ張りベビーカーと引き離した。ベビーカーの子供の方を見ていた女性は僕にお礼を言おうと顔をあげると、女性は彼女だった。

「今日子？」

「あ…」

彼女は赤ん坊の方を見て僕から視線を外した。

「赤ちゃん？今日子の？」

僕は頭の中がパニックだった。
ちらりと赤ん坊を見るとら僕の妹に似ている気がした。
僕は妹と似ているとよく言われたが、自分ではよく分からなかったのだが、他人からは双子のようだと言われた。

「ご…ごめんなさい。」
彼女はベビーカーの日差しを下げ赤ん坊を隠した。

「今日子？この赤ん坊は？」

「ごめんなさい。許して。」

「待って。ちゃんと…ちゃんと話したいよ。頼む…」


僕と今日子はスーパーを出た。
今日子は涙を溜め俯いていた。

「いっぱい、いっぱい聞きたい事があって…でも…最初に…謝りたい。今日子ごめん。今日子の事、何も知らなくて…知ろうともしてなくて…ごめん。」

彼女は涙を拭きながら、首を横に振った。