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第1章 漆黒

黒埼さんを睨み付けようにも焦点すら合わない。

黒埼さんの姿が二重、三重に見えてる。




黒埼さんは手の平で私の頬に優しく触れながら

「俺に逆らったらどうなるか、身をもってわかっただろ？」

「………っ」






頭は回らない。

だけど、心の中はズタズタ。











……逆らった？

私が黒埼さんに逆らった…？

私は黒埼さんに逆らった覚えなんかない…

ただ、社会人として与えられた仕事をこなしただけだ。

変な条件を付けて私をがんじがらめにしてるのは黒埼さんの方だ。




どうして、私が悪いことになってるの…？




「舞…」




私の名前を呼びながら自分の額を私の額にくっつけて、私の体温を確認してるかのような行動を見せた。

私の名前を呼ぶ声は柔らかくて優しい響きだけど…




体中に滲んでいる汗が乾き徐々に肌寒さを感じ始めた。

外気の冷たさを感じて頭はゆっくりと覚醒して行く。




覚醒し出すと今度は、嫌な考えが頭を過る。

酷くされた後はいつも考えてしまう。




私は…、黒埼さんの何…？

働きたいという私の意見や気持ちなど考えてくれず自分の気持ちだけしか通さない…。

私の気持ちなど考えてなどくれてない。






ねぇ、黒埼さん…、私は黒埼さんの何…？

私は、黒埼さんの欲を受け止めるだけの存在…？






さっきまで感じてた黒埼さんの体温が、氷のように冷たく感じた。