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第3章 変わる景色
ホテルを出て、近くの駅まで2人で並んで歩く。

「俺の、連絡先知ってるっけ?」
「あ、前に、何かのときに教えてもらったと思います」

スマホを取り出し、電話帳を開く。

「変わってないですか?」

画面を見せると、「うん、間違いないよ」と前田課長は微笑んだ。

「ちゃんと家に着いたら、連絡して」
「わかりました」


駅で前田課長と別れ、タイミングよく来た電車に乗り込む。
4こ目の駅で降り、急いで家にむかった。


とにかく今は、和俊だ。

まだ、7時過ぎ。電話するには早い。
とりあえずLINEを送ることにする。


ごめんね。
会社の飲みで、スマホ放置してた。


もともと、あまりベッタリした付き合いではない。
友人からは「アッサリしてるね」と言われることも多い。

昨日会社の飲みだったことも特別知らせてないし、電話に出られなかったり、返信が遅れるのはよくあることだ。
もちろん、その間に他の男の人とセックスしていたなんてことは、これまでなかったけれど。


送信して、ひとつため息をついた。
そして、前田課長にもメールを送る。


おつかれさまです。
家に着きました。
ご迷惑おかけしました。


考えて考えて、たった三行の文章のメールを送信する。

前田課長は心配しなくていいと言ったけど、帰ってから奥さんに怒られなかっただろうか。
今日は土曜日、きっと家族で過ごす。

そんなことを考えると、胸がチクリとした。


バスタブにお湯をはり、しっかりつかる。
昨日の夜からのことを、ひとつひとつ思い出す。

前田課長は、どういうつもりでわたしの手を握ったんだろう。
酔っているようには見えなかった。


和俊と付き合って、もう少しで2年半になる。
その間、和俊以外の男の人と肌を重ねることはなかった。
久しぶりの、和俊以外の人とのセックス。
前田課長とのアレコレが頭をかすめ、また、身体の奥がきゅんとなる。

「だめだ」

声に出して、勢いよく立ち上がった。


ドライヤーで髪を乾かしていると、スマホが鳴った。
和俊だ。


一瞬、どきりとしたけど、すぐに出る。

「もしもし」

聞き慣れた和俊の声。

「おはよう。ごめんね、昨日は」
「おー、飲みだったんだ?」
「うん、会社の」

わたしの声は、普段通りだろうか。
大丈夫だと思うけれど、やはり、少しどきどきする。




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