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第3章 変わる景色
「明日なんだけど」

和俊が切り出す。
明日は会う約束をしている。

「コウタが帰ってくるって連絡あってさ。久しぶりに、みんなでメシでもってことになっちゃって…」

和俊は、かつてのバイト仲間の名前を口にした。
今は隣県で働いているらしい、和俊の後輩だ。

「久しぶりだし、そっちを優先しても良いかな」

申し訳なさそうな声。

「うんうん、いいよ、楽しんどいでよ」
「悪いな、サンキュ」

それから少し、他愛もない話をして電話を切った。


再びドライヤーのスイッチを入れて、髪を乾かす。

「サイテー」

サイテーなのは、もちろんわたしだ。
和俊に会わなくていい…ホッとしている。


家について鏡を見たとき、右の耳にピアスがないことに気づいた。
和俊からのプレゼントのそれは、フックタイプのものだったので、服を脱いだときにでも外れてしまったのかもしれない。

ホテルにあるだろうか。
ちょっと気がひけるけど、あとで電話をしてみようか。

迷っているとまた、スマホが短く鳴る。


お疲れ様。
昨日は楽しかったよ。
ありがとう。
また明後日、会社で。


前田課長だ。

24時間前、こんなことになるなんて思ってもいなかった。
きっと、前田課長も同じだ。


「また、会えるかな、2人で」

前田課長の言葉を思い出す。
わたしたちはまた、セックスするんだろうか。


スマホを握りしめたまま、亜沙子は目を閉じる。
そしてそのまま、眠りについた。

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