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第5章 約束
「終わったら、連絡するよ」

水本の頭を撫でて、自分のデスクに戻ろうとすると「前田課長!」と、水本が追いかけてくる。

「ん?」
「あの…、ピアス」
「ピアス?」
「こないだの…ホテルに、忘れちゃったみたいで」

それには気がつかなかった。

「電話したら、ホテルにあったんです。あの…取りに行きたいので、ついてきてもらえますか?」

遠慮がちに尋ねる、水本。

「誘ってくれてるの?」

顔を覗き込むと、また大きな目が見開かれる。

「違っ…さすがに、1人で取りには行けないので…」

そりゃそうだ。
場所が場所だけに、彼氏についてきてもらうこともできないだろう。

「あっ、でも、あの、今日じゃなくていいんです。
そのうち、で」
「わかったよ、それはまた後決めよう」

もう一度水本の頭を撫で、デスクの上のカバンをとる。
ホワイトボードに「18時帰社」と書き込んだ。


「行ってきます」
「行ってらっしゃい」

名残惜しいけど、仕事をしなくては。
俺は、フロアを飛び出した。
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