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第6章 亜沙子の選択
「わたしは」
「ん?」

亜沙子は少し頬を膨らませた。

「わたしは、前田課長がこんなにいやらしい人だと思いませんでした」

一瞬キョトンとした前田課長は「あはははっ」と笑い、そして、真剣な顔になる。


「なんでだろうな。水本のことがかわいくて仕方ないんだよ」
「いろーーんな人に、そう言ってるんじゃないですか?」

前田課長を睨む。

「心外だな」

苦笑いをして前田課長もジョッキを空にした。
そして、チラリと腕時計に目をやる。


「やらしいって言われたから、やらしいこと言うけど」
「…は?」
「昼間の続き、する?」
「…!」


倉庫室での出来事を思い出して、顔が熱くなる。


「でも、水本が嫌なら、無理に誘ったりはしないよ。断ってくれて構わない」

選択権を与えられた。
断ることもできる。

けれど前田課長は、わたしが断れないことを知っているような、自信に満ちた目でまっすぐ亜沙子を捉えている。


「…ピアス、取りについてきてくれますか?」
「もちろん」


亜沙子は残っていた3杯目のビールを飲み干した。
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