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第13章 クリスマス
「亜沙子、亜沙子?」
前田課長の腕が身体に巻き付く。
向き直り、黙ったまま、胸に顔を埋めた。

わたしはなんで、今この人の胸に抱かれているの。


なんで、と自分に問いかけても答えは出ない。
「なんで」はぐるぐると身体中を巡る。
頭とか、心とか、胸とか、子宮とか、脚先とか…ぐるぐるぐるぐる、巡るだけ巡って、挙句答えはでない。


好き。

結局のところ、そうなんだろう。
理屈じゃなく、シンプルに。


好き。


…本当は気づいている。
前田課長も、そして和俊も好き。
それなのに、認めたくないと思っている。
同時に、自分がどれだけひどいオンナなのかも認めることになるから。

それが怖くて、逃げているだけ。
認めたくなくて、逃げているだけ。




しばらく静かな時間が過ぎたけれど、その沈黙を破ったのは前田課長だった。
柔らかな声で名前を呼ばれる。

「亜沙子」
「はい」
「亜沙子、ごめん」
「…え?」

不意に謝られて、心臓がびくりとする。
何を言おうとしているの。

「何が、ですか?」

顔を埋めたまま、尋ねる。


「…ごめん。困らせるって、わかってるんだけど」
「…はい」
「俺、亜沙子のこと、好き」
「…え」

思わず、顔を上げる。
包み込むような、優しい視線。

「ごめんな、こんなこと言って」と、また髪の毛を撫でる。




好き



その一言が、こんなに切ないなんて。
その一言が、こんなに苦しいなんて。
その一言が、こんなに悲しいなんて。
その一言が、こんなに醜いなんて。


そして、
その一言が、こんなに嬉しいなんて。




亜沙子は何も言えずにいた。
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