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第13章 クリスマス
【祐介 side】

「ごめんな、でも、好き」

言ってしまった。
抑えられなかった。

びっくりしたように俺を見つめている亜沙子は、そっと視線を外し「ありがとうございます」と言った。
そしてまた、俺の胸に顔を埋める。


髪の毛を撫でられるのが好きだと言われた。
そう言われたからというわけではないが、亜沙子の髪の毛を撫でる。

「ごめん」

俺はもう一度謝る。
亜沙子は胸の中で首を振る。「嬉しいです」と言いながら。


しばらくそのまま、静かな時間が流れた。
その間、言ってしまったことを少し後悔する。


「シャワー浴びる?」
「…そうしようかな」

ベッドから出て、バスタオルを手渡す。
亜沙子はそれを巻くと、浴室へ向かった。


ひとりになり、深くため息をつく。
「あーあ」と声に出して、天を仰ぐ。


言ってはいけない一言だった。
「好き」と言ったところで、だからどうなるというわけではないのに。
それならば、言うべきことではないのに。
ただ、亜沙子を困らせ、傷つけたかもしれない。


スマホを見ると、美加からラインがあった。
子どもたちの写真と、今日の出来事が書いてある。
ふたりがサンタさんを待ちわびて、とてもいい子にしていると。

またため息をつく。



亜沙子が浴室から戻ってきた。
髪の毛をゆるく纏め、化粧を落とした顔はぴかぴかしている。

入れ替わりでシャワーを浴び、部屋に戻ると、亜沙子はベッドに座っていた。
バスタオルから出ている脚を、床すれすれのところでバタバタと揺らしている。

その姿は、頼りない。
そんな頼りない女の子を困らせるようなことをしてるんだな、とまた胸がチクリとする。
こんな関係を続けて、亜沙子が幸せになれるわけがない。そんなこと、わかってる。


けれど同時に、こんなかわいい子が俺のことで悩んでいるのかもしれないと思うと、少しくすぐったいような、変な気持ちになる。



亜沙子は、何を考えているの。
それを知りたい、けれど知りたくない。
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