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第13章 クリスマス
「いつ?」
「んー。いきなり泊まりは、亜沙子もハードル高いっしょ?だから、年越しはこっちで一緒にして、2日あたりに日帰りでって思ったんだけど…」
「うん…そうね…日帰りのほうがありがたいかな」

身体を元に戻して、紅茶を飲む。
心臓がドキドキしている。


「嫌じゃない?」
「全然、嫌じゃないよ」
「よかった。じゃ、親に言っとく」


安心したようにひとつ息を吐く和俊。

わたしは、不思議なことに動揺しなかった。
素直に嬉しいと感じた。
わたしのことを親に紹介したいと思ってくれている和俊。

奈央ちゃんの「和俊くん、そろそろそういうこと考えてるかもよ」という言葉を思い出したけれど、プロポーズをされたわけじゃない。
この歳になって、もう2年半の付き合いなんだから…ご挨拶くらいはしてもいいのかもしれない。


「緊張するな」
「大丈夫、わりと話しやすい親だと思う。亜沙子に会いたいって、前から言ってたんだ」


和俊の実家は、車で3時間くらいのところ。
もちろん行ったことはないけど、けっこうな田舎だ。

「たぶん、姉ちゃんたちも来てると思うけど」

お姉さん。
結婚してて、お子さんがいる。
まだ赤ちゃんのはずだ。
和俊もメロメロで、何度か写真を見せられた。

お正月だから、お姉さんも帰ってて、そしたらその旦那さんもいて、きっと賑やかなんだろう。

「んー、やっぱり緊張する」
「大丈夫だよ」

そう言うと、後ろから顔を覗き込んでくる。
近づいて、キスをする。

間の悪いことに、生理中のわたし。
もうほとんど終わってるけれど、それを知ってる和俊は、キス以上のことは求めてこない。

身体を繋げなくても、あたたかい時間が流れる。
前田課長と一緒の時間とは大違いだ。
こうしていると、やっぱりわたしには和俊しかいないと心から思う。
このいうのが幸せなんだと。
不倫なんかしている場合じゃない。


「和俊、明日何時に起きる?」
「んー、6時」
「もう、そろそろ寝よ」
「うん、そーしよ」

明日はまだ金曜日。ふたりとも仕事だ。

「亜沙子んちから会社行くの、初めて」
「そうだっけ」

電気を消して、布団にもぐりこむ。
抱き合って眠る。

わたしの場所はここ。
わかってるのに。

ほら、また始まった。



明日は金曜日。
前田課長と会えるかもしれない。







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