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桜の季節が巡っても
第14章 朧夜の春
ともかく『何もしない』約束をして『今夜一緒にいて欲しい』と乞われた。
彼は遵守する。
そういう彼だからこそ、自分だってなんの迷いもなく『一緒にいたい』と思ったのだ。
ふたりの気持ちは一致しているのだから、絶対にない。
分かってる。
けど。
夕食を食べに行く前。

『キスより先はしてくれない?』

確かに思った。
思ってしまった自分がいた-。
気付けば、それを棚からひとつ取り上げていた。
ばくばくする心臓を抑え、他に誰もいないのを見計らってレジに持って行った。
彼を見遣れば-こちらに向かって来るような素振りを見せた。
きっと、支払いをしてくれようとしてる-急いで頭(かぶり)を振った。
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