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桜の季節が巡っても
第14章 朧夜の春
自らの攻めに悩ましく悶え、必死に縋ってくる泉夏の姿は、秀王を極限まで煽ってくる。
「せんせ…」
甘やかな声音を合図に、秀王は泉夏の右手を解放してやった。
その拍子。
ふたりで握り締める形となっていた包みが、微かな音を立てベッドの上へ落ちた。
泉夏がもう片方の手を彼の背中にやるのと、秀王が彼女の身体を掻き抱くのはほぼ同時だった。
腕の中で恍惚とした表情をしてる泉夏の耳元に、秀王は囁いた。
「…思ってない」
「…せんせい?」
「『はしたない』だなんて、少しも思っていない」
告げた彼の唇は泉夏の耳朶に触れ-そこを軽く食(は)んだ。
耳朶、耳輪、あらゆる場所を甘噛みされ、頭の芯が痺れてくる。
「やぁ…っ」
ちっとも嫌なんかじゃないくせに。
こうなる事を待ち望んでいたくせに。
いざとなったら、裏腹な喘ぎが口をついて出る。
なんて素直じゃないんだろうか。
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