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桜の季節が巡っても
第14章 朧夜の春
互いが喜びを噛み締める中、秀王は囁いた。
「…ありがとう」
「ありがとう…?」
「泉夏のお蔭で、俺は今夜泉夏に触れる事が出来る。そうじゃなければ、絶対無理だった」
何を言われているのか-泉夏は理解し、頬を赤らめた。
「使わせてもらっていい?」
間を置かずに訊かれ、泉夏は増々狼狽え始めたが-秀王は答えを待たずに、彼女に唇を重ねた。
羞恥の渦に巻き込まれる寸前で口付けられ、泉夏はそれどころじゃなくなった。
なんの迷いもなく唇をこじ開けられ、捻じ込まれた舌によって、甘美でそして淫靡な世界へと誘(いざな)われてゆく。
唇に。
瞼に。
頬に。
耳に。
首に。
全てを味わい尽くすかのように、接吻を落とされてゆく。
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