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桜の季節が巡っても
第14章 朧夜の春
「泉夏のせいじゃない。泉夏に何かを言われたとか、されたからとか、そういう事は一切関係ない。俺がどうしてもって思ってしまった。全ては俺の意志の弱さが招いた事だ。…でもどれだけ罵られたとしても、もうこの思いは覆せない」
-俺は今夜、泉夏に触れたい。
扇情的な両眼に縛られて、泉夏の胸がどくんと、波打った。
返事をしなきゃと思うけど、僅かに開いた唇からは何も紡げない。
息苦しさを覚えていれば、こちらを見返す彼の顔もまた辛そうだった。
「『うん』って言って」
秀王の手が、泉夏の頬を撫でた。
「泉夏に触れてもいいって。許すって…言って欲しい」
-俺に触れて欲しいって、そう言って?
普段の彼なら、そんな台詞はきっと口にしないだろう。
それが分かるだけに、その一言は重みを伴い、泉夏の琴線を刺激した。
秀王の首筋に両腕を絡ませて、泉夏は応えた。
「はい」
-はい、先生。
抱きつく泉夏の身体を、秀王は強く受け止めた。
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