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桜の季節が巡っても
第15章 蜜夜の春
「『見ないで』なんて無茶は言わないけど。でもちょっと…じっくり見過ぎ」
泉夏の抗議に、秀王は我に返った。
いつの間にか、彼女に釘付けになっていた自分がいた。
何度も言うが、何もかもが初めての夜だ。
だから不躾に見るつもりはなかったのだが-意識せず、魅入ってしまっていたようだった。
いきなり食い入るように見つめられたら、誰だって羞恥は嵩んでしまうだろう。
悪い事をしたと思い、他へ目線を移そうとして-出来なかった。
曲線を描く腰。
しなやかな背中。
剥き出しの細い肩。
垣間見える胸の谷間。
食指が動き。
心は滾(たぎ)り。
身体は昂ぶる。
謝るどころか、気付けば真逆の事を口にしていた。
「『じっくり見ないで』なんて、もう無理だ」
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