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桜の季節が巡っても
第15章 蜜夜の春
前方にボタンのついた洋服ではなかったので、シャツを捲る。
泉夏の腹部が薄灯りの中に現れ、秀王は思わず息を呑んだ。
それはまた彼女も同じだったらしく-そのままの状態でふたりは暫し、動けない。
互いの速まる鼓動が、今しも聞こえてきそうだった。
緊張の糸をどうにか解(ほど)き、秀王は泉夏の右腕を手に取り、そっとシャツから外した。
左側の腕でも同じようにすれば、後は更に捲り上げて首を抜くだけだった。
デニムシャツと共に、既にホックを解かれていたブラジャーも一緒に脱がされる形となり-泉夏は文字通り、上半身一糸纏わぬ姿となった。
煌々と電気の点いた部屋ではないが、でも互いの顔は十分識別出来るくらいには明るくて。
彼に裸体を晒してる自分が急激に恥ずかしくなり、泉夏は慌てて両手で自らの胸を覆った。
面を上げる事も出来ず、自分の身体を抱き締めるような格好で、シーツに視線を落としているしかない。
「…み、見過ぎ」
数秒の沈黙を経て、泉夏は彼を窘めた。
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