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桜の季節が巡っても
第15章 蜜夜の春
泉夏が次に続く言葉を考えあぐねているうちに、秀王に先を越される。
「あと数時間で、泉夏とはまた離れ離れになる。どんなに逢いたいと思っていても、それは適わなくなる。だから見ていたい、泉夏の全てを。今夜の事は絶対忘れないけど。離れていたって、いつだって、すぐに思い出せるけど。でも記憶の中じゃなく、本当の泉夏をぎりぎりの時間まで俺は見ていたい」
-だめかな。
秀王は遠慮がちに笑う。
見た事のない彼女を見たい欲は、当然のようにある。
でも一番は、どんな彼女でも良かった。
どんな風でも構わないから、ずっと見ていたかった。
相変わらず何も言わない彼女に、もどかしさを覚えつつ。
しかし、嫌がる事をあくまでも貫くつもりも当然なく、秀王は譲歩した。
「でももしも、どうしても泉夏が困ると言うのなら…灯りを全部消そうか?」
その提案に、泉夏は内心ほっとした。
暗くなれば、恥ずかしさは格段に低下する。
でも-。
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